これまでに読んだ中でおススメの本を紹介しています。
他ページの映画と同じように、思わず旅行に出たくなったり、世界中の様子を知りたくなるようなものを中心に紹介していきます。
地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる (羽田康祐)
正しい地図の読み方だけでなく、正しく理解をしてもらうための地図の作り方にフォーカスを当てた一冊。
書名に「入門」と書いてあるのにも関わらず、リンク先の出版社のHPでは対象レベルが「入門」ではなく、「初級~上級」となっていることからも分かるように、世間一般のレベル感を無視して、ごく一部の地理好きな人にだけ、かなり刺さる内容になっているかと思います。
実際、中を見ると、1ページも余すことなく、地図の多角的な解説が展開されていきます。
ある種、地図好きには贅沢な一冊になっています。
こういった、一冊まるごと地図の解説だけなんていう図書は少ないんですよね。
きっと地図を読むことが嫌いな人は、すぐにお腹いっぱいになるでしょう。
ただ、我々地理クラスタにとっては読みやすく、曖昧になっている知識をもう一度整理させてくれます。
例えば、日本の人口密度を示す地図を作成するのに、どういった範囲で、どいうった数値で階層を設定するべきかといった考え方を、多くの例となる地図とともに解説をしています。
個人的に面白かったのは、あるテレビの報道番組で使われた、北朝鮮からのミサイルの射程距離を示す地図への「メルカトル図法では正しい距離が示せないだろ。義務教育の敗北。」といったツッコミに対して
著者は、そもそもこれはメルカトル図法ではなくミラー図法、と一刀両断するのが、この本が我々向きであると確信させてくれました。
ほかにも地図好きなら、日本の真下をずっと突き進んでいくとブラジルではなくウルグアイ沖の大西洋上に出る、と知っている人が多いかと思いますが、実際はそうとも言い切れない、といったネタも盛り込んでくれています。
よくある雑学本ではなく、体系的に解説してくれているので、理解も深まります。
地図帳の深読み (今尾恵介)
書名の通り、地図帳から読み取れる、日本や世界の地理の情報を紹介しています。
「よく見ると、この川の流れるルート変だよな」とか、「自分が勉強していた時から、この地域名の表記が変わっているじゃないか」とか、「変な形の国境しているな、ここ」そういった地図帳を見てると気付く何気ない疑問点を解説しています。
内容の概要は、よくある地理の雑学集かもしれません。
ただし、多くの雑学集がそうであるような各テーマの解説が数行で終わってしまうような表面的な内容ではなく、実際の地図帳の誌面や画像、データなどをふんだんに盛り込まれながら、体系的に理解できるように丁寧に解説されています。
そもそもこの図書の発行元は、地図帳を実際に発行している帝国書院。
地図帳を作成する上の工夫などにも触れられながら、全世界の特色が一枚の誌面に落とし込まれた地図帳の魅力を見せつけられます。
内容はある程度地図に慣れ親しんだ人でないと、少しとっつきにくいかもしれません。少なくとも、ヨーロッパの国名を聞いて、大体の位置がイメージできる程度でないと、置いていかれそうです。
ただし、2021年春の時点で3万部5刷を達成。全国の地理好きの心をぐっと掴んでいます。
紙の地図だけでなく、Googlemapはじめ、時々ぼけっと地図を眺めてしまうような人は、楽しめる内容だと思います。
「地図感覚」から都市を読み解く――新しい地図の読み方 (今和泉隆行)
都市地図やWEBマップなどを見ればその地域がどのようなところかをイメージできるようになる、そんな特殊能力?を身に付けるための一冊。
例えば地図をパッと見て、どちらの地域が後に開発されたエリアとか、旧街道の道路はどれだ、そういった判断が付くようになる内容です。
とは言っても、一部の地理好きの人に向けられたような堅苦しい内容ではありません。
表紙デザインのように全体的にポップな印象で、読みやすい内容が特長です。
純粋に地図を見ることがもっと楽しくなってきます。
もし地図自体に興味が無かったり、地図を見るだけで何か嫌な気持ちになってくるという場合、この本を読めばおのずと地図自体に興味が出てくるかもしれません。気づいたら地図さえあれば、どこへでも道に迷わず行けるようになっていた、なんてことがあるかも。
一方で、すでにある程度地図に慣れ親しんでいる人にもオススメです。
内容の大きな切り口の一つが都市開発という観点であり、都市の発達の過程を整理できるのが面白いです。
シムシティやA列車でいこう、といったゲームが好きな人であれば、この本で触れているような都市の拡大過程を興味深く読んでいくことができるかと思います。
自治体の都市開発の担当者は、こういったことを日々考えているだろうか、と想像が膨らんできます。
自分の街の都市開発計画が気になってきます。
自分自身、久しく紙の地図をじっくり眺める機会が減っていましたが、久しぶりに紙の地図を読み込んでみたくなってきました。
FACT FULLNESS (ハンス・ロスリング)
2019年1月の発行以降、2年近く経った今でも書店では目立つ棚に陳列され続けている、言わずと知れたベストセラー。
公式で紹介されている内容は以下の通り。
『ファクトフルネスとは データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。』
果たして自分が認識しているその情報は本当に正しいのか?
日々触れる情報を疑い、客観的事実を知る習慣を身に付けるため、主にビジネスパーソン人気のある良書かと思います。
実際にこの本の中で常識クイズが掲載されており、いかに自分が常識と思い込んでいるものが間違っているのかを思い知らされます。
例えば、以下のような問題。
・世界の人口は現在の人口に対してどの程度増加するのか
・全世界で日々の生活の中で電気を利用できる人はどの程度の割合か
・全世界の子供で、男子に比べて女子はどの程度教育の機会があるか
・絶滅危惧種と指定された動物は、その後どうなったか
この本を読んだ後は、あらゆるニュースやTwitterの各種投稿を見ると、「で、根拠は何だ?」と思うようになります。めんどくさい人間かもしれませんが笑。でもこの世知辛い社会を生き抜くには、必要な視点。
特に昨今のコロナに関して、必要な視点かと思います。
色んな情報が飛び交い、ある数値があたかも絶対的な基準かと紹介されていますが、果たして皆が重要視して話しているその情報は、果たして本当に考慮すべき指標なのか? そもそも事実なのか?
変に情報に踊らされず、冷静にいることができるようになるかと思います。
その中でなぜ旅や地理という観点でおススメかというと、もちろんデータを通じて紹介されている世界の経済事情や教育レベルなどの社会情勢などの事象がとても興味深く、知的好奇心をかき立てられるということが挙げられます。
ただし、それ以上に訴えたいのが、地理や地理学自体といったことに対して興味を持つきっかけとなりえるのではないかと勝手に感じております。
というのも、この本のテーマである、様々なデータを読み解いたり組み合わせて世界の本当の情勢を知る、というその過程が、高校以降で学ぶ地理の知識を得ることとかなり近いものを感じました。
この本がベストセラーになることで、その重要性が見直されている一次データに近い情報の接し方は、元々学問としての地理で行われているかと思います。
地理の学習というのは決して暗記などではなく、各種データをはじめ多角的な視点で得られる様々な情報をパズルのように組み合わせて、ある地域に対するストーリーを作り上げていく、ということが特徴だと思っています。
その多角的な視点を組み合わせる楽しさに気が付くと、次々と色んな情報を得たくなり、気づけば自分の周りは地理に関する本や情報に囲まれているはずです。そして旅行などの活動に対しても深みを持つことができるのではないかと感じています。
普通に生活していると触れにくいその楽しみを、この本は多くの人が絶賛するその内容とともに簡単に気づかせてくれます。きっかけとしてよい図書だと思っています。
学問としての近年の地理の扱いは、高校のカリキュラムを初め、大学受験や大学の専門などで、なぜか年々ウェイトが小さくなっています。
なかなかその楽しさに気づくチャンス少ない地理に対して、今周りで密かな熱を帯びていることに、勝手に千載一遇のチャンスのようなものを感じています。
本の内容というよりも、地理的視点を持つことの重要性に対してつらつらと書いてしまいましたが、どちらにせよ自身に新たなスキルや思考力を持つことができるおススメの内容です。
ややこしい話は置いておいて、まずはこの本を読んでみて、データを見ることの重要性を、認識してみるのが良いかと思います。
三国志男 (さくら剛)
著者紹介ページで「引きこもり」と書かれている著者が、中国各地に埋もれる知られざる三国志縁のスポットを訪問するルポ。
三国志好きからすると「へー、こんなところあるんだ」と、普通の観光客は絶対に行かないマニアックなスポットを訪問する様子を知ることだけでも十分に興味深いものですが、この著者の神髄はその表現力。
発行はブログ文化最盛期ともいえる2008年。
一見堅苦しいとも思われる三国志を、あの頃の緩々の表現でとても面白く綴られています。
帯に記載されている文言は、
『あった!! あったぞ!!! 王平の墓だっ!! おお~~~。へえ~~~。』。
終始このテンションで繰り広げられます。
適当に開いたページには、
『仮にボブ・サップが三国時代に乗り込んだとしても、馬超どころかせいぜい馬鉄あたりに軽く捻られるのがオチだろう。いや、馬鉄だとなんとなく鉄だから硬そうだが、休みがちな馬休のローキックでも簡単に打ち取られてしまうに違いない。』
と綴られ、全364ページはおろか、全文章がずっとこのテンションで続けられていきます。どれだけこんなネタを思いつくのか…!
当時のブログ文化に馴染みのある人なら、今読んでみてもかなり面白いと思います。
こういった表現の面白さを他人が紹介するのはなかなか難しいですが、電子書籍でも発行されているので、一度チェックしてみることがオススメです。
この著者は三国志のほかにも終始このテンションで繰り広げられる旅行ルポの図書が多数あるので、気楽にいろいろと貪ってみるのがよいかなと思います。
インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも (さくら剛)
まさかの、さくら剛氏の著書2誌目の紹介。
内容は、上の「三国志男」がインド旅行になった、ということでお分かりいただけるかと思います。
2006年発行とのことですが、今読み返しても当時のブログ文化に慣れ親しんだ人であれば、帯に記載されているように吹き出しながら読めるかと思います。
『牛「モオオオオオ~~ッ!」
うおおお~~っ!!!
あれ、もう五時半か……。』
文章をそのまま切り貼りしても、この面白さを伝えるのは難しいですが、こんなテンションの文章が、こちらもまた全センテンスで展開されていきます。
『着替えを持って意気揚々とシャワーへ向かうと…
(写真)
ま、一日くらい浴びなくてもいいだろ。』
インドにみんながハマる理由がきっと分かる。
そしてなぜか、気づけばこの世界観に自分も浸かりたくなる漬かりたくなる。
インドへ行く前に必読の1冊だと思います。
インド渡航経験者は、共感でしかないかと思います。
果たして、普通に旅行をしているはずだったこの著者以上にネタに溢れたインド旅行ができるかどうか?!